友を想う詩! 渡し場
友を想う詩! 渡し場
口語訳詩(猪間驥一訳)
新設:2012-10-14
更新:2021-09-01

友を想う詩!ウーラント原作「渡し場」の原詩を
猪間驥一が口語訳詩とした 4つの作品を紹介
なお 原文に付されたルビは 「詞」の後の( )内に 小さな文字で示す

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口語訳詩-1

渡し場で

原作 : ルードウィッヒ・ウーラント (1787-1862)
訳詩 : 猪間驥一 (1896-1969)

いく年(ねん)前か この川を
一度(いちど)わたった ことがある
いまも堰(せき)には 水どよみ
入り日に城は 影(かげ)をひく

この小舟(こぶね)には あの時は
わたしと二人(ふたり)の つれがいた
お父(とう)さんにも 似た友と
希望(のぞみ)に燃えた 若いのと

一人は静かに はたらいて
人に知られず 世を去った
もう一人のは いさましく
いくさの庭で 散華(さんげ)した

しあわせだった そのむかし
(しの)べば死の手に うばわれた
だいじな友の 亡いあとの
さびしい思いが 胸にしむ

だが友達を 結ぶのは
たましい同士の ふれ合いだ
あの時むすんだ たましいの
きづながなんで 解(と)けようぞ

渡し賃だよ 船頭さん
三人分(さんにんぶん)を 取っとくれ
わたしと一緒に 二人(ふたあり)
みたまも川を 越えたのだ


【出典】
猪間驥一著「人生の渡し場」12~13頁
昭和32年(1957)7月三芽書房刊


口語訳詩-2

渡し場にて

原作 : ルードウィッヒ・ウーラント (1787-1862)
訳詩 : 猪間驥一 (1896-1969)

いく年まえか この川を
いち度わたった ことがある
堰にはいまも 水どよみ
お城は夕日に 照りはえる

この小舟には あのときは
わたしと二人の つれがいた
おとうさんにも にた友と
のぞみに燃えた 若いのと

ひとりは静かに はたらいて
人に知られず 世を去った
もうひとりのは いさましく
いくさの庭に 散華した

しあわせだった そのむかし
しのべば死の手に うばわれた
やさしい友の 亡いあとの
さびしい思いが 胸にしむ

だが、友と友 むすぶのは
たましい同士の ふれあいだ
あの時むすんだ たましいの
きづながなんで 解けようぞ

渡し賃だよ 船頭さん
三人分を とっとくれ
わたしと一緒に ふたありの
みたまも川を 越えたのだ


【出典】
猪間驥一筆
『渡し場の歌』物語 24行の詩に美しい曲がつくまで
雑誌「文芸春秋」昭和38年5月号274~280頁
昭和38年(1963)5月 文藝春秋社刊


口語訳詩-3

渡し場にて

原作 : ルードウィッヒ・ウーラント (1787-1862)
訳詩 : 猪間驥一 (1896-1969)

いく年(とせ)まえか この川を
いち度わたった ことがある
(せき)にはいまも 水どよみ
お城は夕日に 照り映える

この小(お)(ぶね)には あのときは
一緒(いっしょ)に二人(ふたり)の 友がいた
おとうさんにも にた友と
望みに燃える 若いのと

ひとりはしずかに はたらいて
人に知られず 世を去った
もうひとりのは いさましく
いくさの庭に 散華(さんげ)した

しあわせだった そのむかし
しのべば死の手に うばわれた
やさしい友の 亡いあとの
さびしい思いが 胸にしむ

だが、友と友 むすぶのは
たましい同士の ふれあいだ
あの時むすんだ たましいの
きづながなんで 解けようぞ

渡し賃だよ 船頭さん
三人分を とっとくれ
わたしと一緒に ふたありの
みたまも川を 越えたのだ


【出典】
猪間驥一著「なつかしい歌の物語」128~129頁
昭和42年(1967)7月 音楽之友社刊


口語訳詩-4

渡し場で

原作 : ルードウィッヒ・ウーラント (1787-1862)
訳詩 : 猪間驥一 (1896-1969)

お城に夕日映(は)
(せき)には波さわぎ
むかし越えた日と
かわらぬこの川

あのときこの舟に
二人(ふたり)の友がいた
あふれる若さのと
父ともしたうのと

ひとりはつつましく
暮らしてこの世去り
ひとりはいさましく
いくさに倒(たお)れた

よろこびみちみちた
あの頃おもえば
ひとり旅をゆく
さびしさ身にしむ

とはいえ心を
むすんだきづなは
死の手も絶ち切る
ちからをもたない

船頭さん、とっとくれ
船ちん、三人分
わたしのほかになお
ふたりがいたのだ


【出典】
猪間驥一著「なつかしい歌の物語」150~151頁
昭和42年(1967)7月 音楽之友社刊
【注】
この訳詩は、ハイデルブルクの音楽家「テオドール・ハウスマン」が原詩に作曲した譜面で歌えるように、七五調でなく一節を四、八、三十二文字に訳し直したもの。「文芸春秋」掲載記事で協力を申し出た高山幸生と半年かけて意見交換を手紙で続け、難しく満足するものではないが、ハウスマンに報告するため、まとめたものという。