按針亭
友を想う詩!
新設 : 2012-10-14
更新 : 2016-03-18
文語体訳詩(解説と吟詠)
花田正夫
友を想う詩! ウーラント原作「渡し場」に 魅せられ語り継ぐ人々

    略  歴    

(はなだ まさお) 1904年(明治37年)~1987年(昭和62年)

明治37年(1904)岡山県で誕生
第六高等学校在学中、教授の山岡望から指導・感化を受ける
第六高等学校卒業後、岡山医科大学に入るが、同校を3年で中退
京都大学文部に入学、昭和6年(1931)同大学哲学科仏教学卒業
以後、大連西本願寺別院、名古屋別院、愛知県教護連盟主事
名古屋保護観察所保護司などを経て終戦により退職
昭和24年(1949)4月より雑誌『慈光』(慈光社)を主宰し月刊発行、昭和61年(1986)7月廃刊
昭和62年9月26日永眠

語り継ぎの足跡































「慈光」昭和31年(1956)10月号、花田正夫著「心に映ることども」
末尾4ページ下段囲み欄に(週刊朝日抜)として「渡し場」詩文を掲載


       人生の渡し場

年流れけりこの川を ひとたび越えしその日より
入り日に映(は)ゆる岸の城 堰(せき)に乱るる水の声

同じ小舟の旅人は 二人の友とわれなりき
一人はおもわ父に似て 若きは希望に燃えたりき

一人は静けく世にありて 静けきさまに世を去りつ
若きは嵐のなかに生き 嵐のなかに身を果てぬ

(さち)多かりしそのかみを しのべば死の手にうばはれし
いとしき友の亡きあとの さびしさ胸にせまるかな

さは友垣(ともがき)(ゆ)うすべは 霊(たま)と霊(たま)との語らいぞ
かの日の霊の語らひに 結びしきずな解けめやも

受けよ舟人(ふなびと)舟代(ふなしろ)を 受けよ三人(みたり)の舟代(ふなしろ)
二人の霊とうち連(つ)れて ふたたび越えぬこの川を

               ネッケル河を渡りて
                  ルードウィッヒウーランド作
                     (週刊朝日抜)


<注>
ここでいう週刊朝日は、昭和31年(1956)10月7日号であり、実発売は10月1日頃であったと思われるので、花田正夫は当該「週刊朝日」をみて直ちに、「渡し場」詩文を同年10月15日発行「慈光」に差し込んだものと思われます。


語り継ぎの足跡














































花田正夫著「生死巌頭を照らす光」昭和62年(1987)樹心社刊
「久遠の友…松本解雄先生を憶う」(102~111ページ)のうち
「再び越えぬこの川を」(102~104ページ)部分を抜粋


再び越えぬこの川を

いつも欠かさず一道会に御出席いただきました松本解雄先生の死は、私に大きな教えを残して下さいました。それは真実の友情、永遠の友ということであります。

池山先生が亡くなられた時は、よき師、よき親にお別れして存分に悲しませていただきました。夕陽が西に沈みます時に月と星が皎々と輝きますように、友も師も親も亡くなってのちにすこしづつその本来の姿を知らされはじめるのであります。昔から阿呆の智慧はあとからと申しますが、生前にはまことに軽く思っていたことを愧(は)じ入ることであります。こうした私はよき友、久遠の友情ということをとつおいつ心に浮かべておりますについて、かって覚えたドイツのウーランド詩を思い出します。ここで一読いたしましょう。

       人生の渡し場

年流れけりこの川を ひとたび越えしその日より
入陽に映える岸の色 せきに乱るる水の音

同じ小舟の旅人は 二人の友と我なりき
一人は面は父に似て 若きは希望に燃えたりき
一人は静けく世にありて 静けきさまに世を去りつ
若きは嵐の中に生き 嵐の中に身を果てぬ
幸多かりしそのかみを 偲べば死の手に奪われし
いとしき友の亡きあとの 淋しさ胸に迫るかな
されど友垣結(ゆ)うすべは 魂と魂との語らいぞ
かの日の魂の語らいに 結びしきずな解けめやも

受けよ舟人舟代を 二人の友とうち連れて
再び越えぬこの川を
これはウーランドがラインの支流ネッケル河を渡った時の詩であります。昔三人の友達があて、この川を渡った。一人は物静かな人、一人は元気な人、二人共に今は亡く、自分一人で渡っいるけれど、魂と魂との交りは、今でも三人で居るのだ。渡り終えて舟人に、三人分の舟代を渡した、という詩で、ドイツばかりでなく、日本でも心ある人々に愛唱されております。

私も今こうして一道会に出させていただきましたが、松本先生、池山寿夫先生、白井先生が、眼に見えませんが、何処かに坐られてジッと見守っていて下さる。
                             (昭和五十年十月二十六日)
<注>
花田正夫が口述した録音を、別人が書き起こしたための影響が、詩文などに出ているように思われます。

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